椎茸にちりりと醤油かけてやる

(しいたけに ちりりとしょうゆ かけてやる)

角川俳句2020年1月号掲載句
令和俳壇 雑詠 五十嵐秀彦先生選 佳作
        小林貴子先生選 佳作
        星野髙士先生選 佳作

三人選が嬉しいです。

椎茸は子供の頃から苦手な食べ物No.1でした。特に煮物やちらし寿司の上に乗っているのが苦手で...。
私が30手前の頃、入院中の父の付添いで夜に病室に泊まる生活が1年ほど続きました。あるとき自分の食事を用意するのが億劫になり、何か買ってしまおうとコンビニに立ち寄りました。食事には中途半端な時間帯で棚には「きのこの和風パスタ」しかなく、(どうしよう...椎茸入ってる)と思いましたが選択の余地なく仕方なく買って食べたところ、それがことのほかおいしかったのです。疲れていたせいでしょうか。"空腹に勝るものなし"というわけでもなかったのでしょうが...。それからは、椎茸をおいしくいただけるようになりました(^^)

 

木も人も呼吸ととのへ秋の湖

(きもひとも こきゅうととのえ あきのうみ)

俳句界2019年9月号応募句
雑詠
櫂未知子先生 選 佳作

夏に母が退院し、体も気持ち的にも落ち着いてきたころの句ですね。
去年と代わり映えのしない年であったように思えますが、振り返るといろいろとあった一年だったかもしれません。

父の忌の秋の葉山の夕日かな

(ちちのきの あきのはやまの ゆうひかな)

俳句界2019年9月号応募句
兼題:「葉」
名和未知男先生 選 佳作

俳句界3月号掲載予定分まで投句しておりますが、定期購読が終了することもあり、先月の投句分をもって本誌への投句をいったん終えることにしました。備忘録をみると2016年7月が初投句で、そのときの兼題『真』で名和未知男先生の佳作に入ったのが初入選でした!感慨深いです。

投句をやめることにはそれなりの逡巡、葛藤がありました。やめどきを決めるのも難しいことですね。でも次のステップアップに向けて新たな目標を立て、さらに俳句に邁進してゆけたら...と思っています。

秋蝶の濃き影われに触れゆきし

(あきちょうの こきかげわれに ふれゆきし)

あるふぁ俳壇2020年冬号掲載句
高野ムツオ先生 佳作

初めての高野先生選が嬉しいです。

まだ夏の日差しが残る9月、一人、坂をのぼっていたときに出逢った蝶のことです。実際には蝶の影が私の脚の影をふわふわと横切ってゆくかたちで、蝶の影とわれの影の両方を詠み込もうとしたのですが説明調になってしまい、蝶の影に焦点をあてることにしました。それで矛盾なく読み手に伝わるかは、一種の賭けのようなものでした。

影は秋より夏のほうが濃いのではないかと考えましたが、実景のまま詠みました。秋の影は長く伸びて美しい。衰えてゆくものの美しさをくっきりと伸びゆく影の輪郭に見いだしたつもりです。

木の葉降る写真のなかの父へ降る

(このはふる しゃしんのなかの ちちへふる)

NHK俳句さく咲く!令和元年11月放送応募句
兼題:木の葉
堀本裕樹先生 選 佳作

母のことを詠んだ句と亡き父を詠んだ句を一句ずつ投句しました。自分では出来は母句のほうがよいかなと思っておりましたが、結果は父句に軍配が上がりました。母句は推敲してふたたびの投句を目指します。

表だってはおっしゃらないけど、このブログを覗いてくださる方がいてありがたいことです。言葉を大事にする人とこれからもどこかでつながっていたいです。

手袋のうさぎがいないいないばあ

(てぶくろの うさぎが いないいないばあ)
NHK松山放送局 ラジオまどんな句会 2019.12.2(月)
兼題:手袋
神野紗希さん選

作句にあたっての紗希先生からのメッセージは、「手袋は、私たちの冬の日々に欠かせない存在です。どんな色や素材の手袋か、誰のどこにある手袋か、あたたかさをいうか寒さをいうか、手袋のある場面を想像しながら詠むと、ドラマのある俳句になるでしょう」でした。

以下、いただいた選評の文字起こしです。

(紗希先生)手袋で作る人形ありましたよね。
(岡田さん)やってましたねー。なつかしい!
(紗希先生)手袋のうさぎというところも、それがいないいないばあとそのまま接続するところも省略が効いていましたね。うまい句です。

技術的な面をほめていただいて光栄です。ただ、寒さ暖かさという、「手袋」という季語の本意にもっと寄り添うべきだったかとそこが反省点です。だからこそ、最後の『最も良かった一句』に選ばれた南方日午さんの極寒のオーロラとボアミトンを詠まれたお句が素晴らしかったです。そして実景、実体験が大事。

今年最後のまどんなラジオ句会でした。紗希先生、一年間ありがとうございました。来年も投句します。

シガレットを美しく吸ふ敗戦忌

(シガレットを うつくしくすう はいせんき)

角川俳句2019年12月号掲載句
令和俳壇 雑詠 五十嵐秀彦先生選 推薦
        星野髙士先生選 佳作

まさかまさかの本年2回目の『推薦』です。しかも星野先生の佳作まで!驚きましたが、この句をとっていただけてほんとうに光栄です。

自句自解が苦手なのであまり多くを語りたくないのですが、ある邦画からの作句です。偶然目にした白黒映画のワンシーンでしたが、どこか惹かれるものがありました。

五十嵐先生が選評で<シガレット>に言及してくださっているのが本当に嬉しいです。真正面から敗戦を語るのは私には難しいことですが、そう...昭和の日々の欠片のような一齣を詠んだつもりでした。

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五十嵐先生、素敵な選評をありがとうございました。この選評は宝物にします。