蒲公英や兵士の墓碑に短き詩

(たんぽぽや へいしのぼひに みじかきし)
NHK松山放送局 ラジオまどんな句会 2020.4.6(月)
兼題:たんぽぽ
神野紗希さん選 最も良かった一句

作句にあたっての紗希先生からのメッセージは、「春の野や道端を彩るたんぽぽ。ぽっと心を灯す明るさを詠むか。踏まれても力強く咲くたくましさを詠むか。たんぽぽを通して、さまざまに、命が描けるといいですね」でした。

初めて「最も良かった一句」に選んでいただきました。しかもまさかの「たんぽぽ」で。たんぽぽという兼題はこれまでもNHK俳句などでありましたが、身近なものほど詠めそうで詠めなくて、とても苦手意識のある兼題だったのです。

以下、紗希先生からいただいた選評の文字起こしです。

非常にけんもく(謙黙?)の深い句でした。たんぽぽが亡くなった兵士の墓のそばに咲いている。その風景を淡々と詠んでくださったのですけど、海外の墓碑にはよく生前その人が愛した詩のフレーズが刻まれていたりしますよね。たんぽぽは健気にたくましく生きる野の花ですので、兵士とならざるを得なかったその辛い時代に生を受けて死を迎えてしまった一人の人がいたと。でもその人がたしかにこの世に生きてその詩を愛したということをたんぽぽがやさしく証明してくれていると思いました。その短い、刻まれた詩の言葉のなかにも彼の生きた時間のかけらがあるような気がします。

作った本人は(こんなに素敵な鑑賞をいただいてしまってどうしませう...)という感じです。信じられなくてようやくいまじわじわと嬉しさがこみ上げてきています。
紗希先生、ありがとうございました。

ラジオまどんなblog → 4月6日(月)放送後