夏の月主治医に脈をとられゐて

(なつのつき しゅじいにみゃくを とられいて)
NHK松山放送局 ラジオまどんな句会 2019.8.20(月)
兼題:夏の月/冷蔵庫/毛虫
神野紗希さん選

今月の放送は俳句甲子園スペシャル!ということで、今年度の俳句甲子園の兼題であった『夏の月』、『冷蔵庫』、『毛虫』の三兼題からの募集でした。
紗希先生からのメッセージは、「高校生と同じお題で詠むことで、俳句甲子園の苦労やたのしさをより身近に感じていただけると嬉しいです。」

冷蔵庫以外の兼題で一句ずつ投句し、放送中、『夏の月』で読み上げていただきました。

以下、いただいた選評の文字起こしです。

紗希先生)これもねぇ、だからなんなのだと言われたら単純な、あのぅ(笑)、そういう病院にいる、入院している時間ですよということなんですけど、「とられゐて」のところにかすかな緊張感のようなものがあって、視線は夏の月、窓の外にやっているんだろうなぁという、そのへんの何でも無い時間がさりげなくすくいとられているところに惹かれました。
岡田さん)これはあの、平林檸檬さんからの一言がすごく可愛くて、「この夏、母が入院し手術を受けたのですが、主治医の方が素敵な方でして、一句詠んでみたくなりました」ということです(笑)
紗希先生)確かに主治医の先生を信頼している感じがでています。
岡田さん)可愛いですね。

お便り欄を読まれると思わなかったので、ああ恥ずかしい・・・。この程度のコメントに留めておいてよかった(笑)
下五の「とられゐて」は、まさに紗希先生が仰ってくださった緊張感というか内に秘めたときめきみたいなものを表現したくて「ゐて」にしました。『いやいや、脈をとられているのはお母さんであってお前ではないだろう』というツッコミが聞こえてきそうですが、まぁそこは、日々の病院通いを楽しく過ごすための「心の支え」ということでどなた様もお許しください。

紗希先生、今月も素敵な鑑賞をありがとうございました。
夏の月という季語が好きになりました。
これからも日常のなにげない一齣を句に詠んでいきたいです。

夏の月 暑い夜に青白く輝く夏の月は涼しげである。また、赤みを帯びてのぼる夏の月は、火照るような感じを与えることもある。(合本 俳句歳時記 第五版 角川書店編より)